英語スピーキング力アップに効果的と言われる「シャドーイング」。そのやり方、効果が出ていますか?正しいやり方で行うと、スピーキング力アップだけではなく、正しい発音やイントネーションの習得、また、リスニング力アップにも効果が出る奇跡の学習法なんです。この記事では私が【黄金のシャドーイング法】と呼ぶ、効果を最大限に出す方法を細かく解説いたします。
シャドーイングとは?
シャドーイング法の利点
まずシャドーイングとは、英語の音声を聞きながら、それを即座に自分の言葉で真似するという学習方法です。言い換えれば、英語を「影のように追いかける」ことからその名がついています。この方法は通訳の練習をしてよく使われており、ひいては英語のスピーキング力アップを目指す学習者にとても効果がある方法として知られています。スピーキングだけではなく、実はより良い発音の習得、さらにはリスニング力も向上させてくれる、かなりお得な学習方法なのです。
シャドーイングを始める前に知っておくべきポイント
ただし!!!
シャドーイングは決して難しい方法ではありませんが、【ただ聞いて真似ている】だけでは、それに費やしたほどの効果が得られないのです。なのでシャドーイングの甘い汁を吸いたいならば、できるだけ効果が出る方法で取り組んでいただきたいと思います。
この記事ではこれまで私が23年間教え続け、数千人の日本人学習者のスピーキングを短期間で一気に変えてきた方法を詳しくお伝えしますね。その名も
黄金のシャドーイング法。
いくつかのコツを押さえて実践することが成功への近道です。そのコツを解説していきます。
黄金のシャドーイング法
興味のあるトピックを選ぶ
まず最初に重要なのは、自分が興味のあるトピックを選ぶことです
英語を学ぶ上でモチベーションを保つためにも、まずは自分が興味を持てる内容の音源を選ぶようにしましょう。
政治、経済、教育、スポーツ、旅行・・・などトピックはさまざまですが、自分がワクワクする内容や、自分が好きな俳優・好きな声の人を探すといいですね。
中でもニュース番組は特におすすめです。
映画やドラマの方が「楽しそう」な感じはしますが、感情表現が豊かでスピードが不規則なので、初心者には少し難しいかもしれません。逆にニュースではキャスターがはっきりとした発音で話してくれるため、シャドーイングが初めての方でも理解しやすく、スムーズにシャドーイングを始められます。
スクリプトを手にいれる
シャドーイングをする際には、音声のスクリプト(文字起こし)を用意することが大切です。スクリプトがないと、何を言っているのか分からない部分が出てきて、学習効果が思ったように上がりません。
スクリプトがあることで、発音や文法、語彙の使い方が分かりますし、シャドーイングの後にスクリプトを見て確認することで、理解度が深まります。スクリプトがない状態で音声だけを聞き続けるのは効率的ではありませんので、事前にスクリプトを手に入れておきましょう。
YouTubeから音源を取る場合は、キャプションをオンにして何と言っているのかわかるようにするといいですね。時々異なる部分もありますが、音源を聞いて、文法や意味を考えて、ほぼ必ず合っていると確信できるものであれば使えます。ちなみに用意する音源は、まずは10秒〜15秒程度のものでいいんですよ。
映像を合わせて、視覚情報を活用する
シャドーイングを行う際には、音声だけではなく映像も活用することをおすすめします。日常会話では音声だけでなく、話し手の表情やジェスチャー、状況などからも多くの情報を得ているからです。音声だけに頼って学習を進めると、英語を100%「音」だけで理解しようとしてしまい、実際の会話でも耳からの情報ばかりに頼ってしまうからです。実際には目から入る情報もかなり理解の助けになっているのですよ。
特に、ニュースやトーク番組では、話し手の顔やジェスチャーを見れる場合がありますね。
黄金のシャドーイング法では実際、こういった表情やジェスチャーや立ち方・目線なども一緒にコピーしていくのです。
実践するための3ステップ
真似っこする素材が準備できたら、実践です。
実際にシャドーイングを行う方法を順を追って説明していきます。
STEP 1:サイレントシャドーイング
最初に行うのは「サイレントシャドーイング」です。
これは、音声を聞きながらその内容を【口から小声で出す(ささやく)】練習です。ほとんど声に出していない段階なので、集中力は聞き取る方にあります。まずは耳をしっかりと活性化させ、リスニングスキルを向上させましょう。
最初のうちは音声が速すぎて理解しづらいかもしれませんがあまり気にせず、何度も繰り返し聞いてください。わからない部分があっても、焦らずに続けることが大切です。サイレントシャドーイングは2〜3回繰り返しましょう。
そしてサイレントシャドーイングの段階で必ず完了しておくべきことは、【内容の把握】です。
この段階で、何を言っているのかわからない部分は完全に潰しておきましょう。何を言っているか全て理解できたら、次のステップ2に進んでください。
STEP 2:アクティブシャドーイング
サイレントシャドーイングで音源にだいぶ慣れてきたら、次に行うのが「アクティブシャドーイング」です。これは、音声を聞いた後にそのまま声に出して繰り返す練習です。アクティブの時の集中力は【できるだけ元音源に近い音を口から出す】ことにあります。元音源が速くなったら自分も速く、ゆっくりのところは自分もゆっくりと、イントネーションも完全に真似っこした音が口から出せているか意識しましょう。
一度に完璧に真似る必要はありません。できる範囲で真似をすることで、今まで出したことのない音(それこそ英語の音かもしれません!)を出せるようになることもあります。自分では「こう」だと思っていた単語の音が、実際に聞いてみると違って聞こえることに気づくのも良い学習です。
アクティブシャドーイングの最大の利点は、【自分なりに読んでしまっていた英語の音や抑揚を変えてしまう】ことです。私自身もそうでしたが、多くの日本人英語学習者はどうしても「自分が思っている英語っぽい読み方」で何年も来てしまっていることがあります。そしてそこからどうしても抜け出せない・・・例えばアクティブシャドーイングで”water”と言っているのをよ〜く聞いてみると、これまで自分が発音してきた”water”と全然違うふうに聞こえることがあります。そしてそれこそを、真似っこして欲しいのです。
STEP 3:特に意識して真似するところ
アクティブシャドーイングを何度も繰り返し練習していくと、だんだん音源のその人になった感覚に襲われます。また話し手の発音や口の動き、ジェスチャー、さらには声のトーンまでを真似ていきます。そして最終的には音声が完全に耳に染み込み、そのまま自分のスピーキングに反映されるようになります。
私はこれを【声のダウンロード】と読んでいますが、これこそが黄金のシャドーイングの醍醐味なのです。自分なりに勝手に読んできた方法が上書きされ、音源の人っぽくなる。たくさんの声をダウンロードできると、自発的な英会話でも、その人の声が時々口をついて出てくるようになるんですね。
効果を最大化するための重要なポイント
シャドーイングを効果的に活用するためのポイントをいくつか紹介します。
スクリプトを見ない!!
まず絶対におさえておきたいポイントは、
⚠️⚠️スクリプトは絶対見ない⚠️⚠️(アクティブシャドーイング時)
ということです。
スクリプトを見ながら音を聞いてアクティブシャドーイングをする生徒さんにかなりたくさん会ってきましたが、それでは効果が半減(というか効果出てないかも!?)します。なぜかというと、スクリプトを見ながら読んでいると、やっぱり「これまでの自分の読み方で読んでいるだけ」になっていることが多いからです。
目でスクリプトを追っていると、耳からどういった音が入ってきているのかにあまり注意を向けることができません。
黄金のシャドーイングの醍醐味は上述したように、【自分なりに読んでしまっていた英語の音や抑揚を変えてしまう】ことですので、
・実際にどんな音が耳から入ってきているのか、そして
・その音はどうやったら出せるのか
に最大限に敏感になっていただきたいのです。
なので、STEP1:サイレントシャドーイングを終えた段階で、スクリプトはもう横に置いておきましょう。
これを知らずにシャドーイングに長い時間をかけてしまっている場合は、時間がもったいないかもです!
その他の注意事項
- 集中力を高める: シャドーイングは、ただ音声を聞くだけの作業ではなく、非常に集中力を必要とするトレーニングです。長時間ダラダラ続けるのではなく、1日5分、など決めて、短期決戦で取り組みましょう。なので上述したように、用意する音源も10秒ほどのもので大丈夫です。この10秒を完コピすることが、あなたの英語スピーキング力を確実に変えていきます。
- できるだけ毎日取り組む: 1週間に1回長時間取り組むのではなく、短い時間集中して【毎日】行うのがベストです。また、同じ10秒クリップを1週間使い続けても大丈夫。この音源は完全にコピーした!と思えるまで同じものに取り組んで、自分のレパートリーに刻んでいくことが実際の力となります。
シャドーイングは英語のスピーキング力を上げるための、かなり実践的で効果的な方法です。リスニング力の向上、発音の改善にも直結します。最初は難しく感じるかもしれませんが、正しい方法で続けることで必ず成果が現れるはずです。興味のある内容を選んで、自分のペースで取り組んでみてくださいね。
シャドーイング教材
YouTubeのTED Talkや、ニュース番組はとてもやりやすいですね。CC (closed caption)がついているものだと、何を言っているのか分かります。ご自分の英語のレベルや興味に合わせて、使い分けてみてください。
TED Talks
世界中のパワフルなスピーカーたちが、ありとあらゆるトピックについて話をするTED Talks。
スピーチが上手な方が多いのではっきりとした聞きやすい英語が多く、シャドーイングはやりやすいかもしれません。またトピックが多岐に渡るので、ご自分の興味のあるスピーチを探しやすいですね。
TED Talks: https://www.youtube.com/user/TEDxTalks
Stanford Graduate School of Business
ビジネス系のスピーチを探せます。北米英語が多いです。
スピーチだけではなく、ビジネスのさまざまなトピックについての説明動画もあるので、アメリカの大学での講義を聞いているような雰囲気を味わえます。
Stanford Graduate School of Business: https://www.youtube.com/@stanfordgsb
London Business Forum
イギリス英語でのビジネス系シャドーイング教材を探している方は、こちらはいかがでしょうか。
将来イギリスへの留学が決まっている方などは、こちらの方が現地の人の音に近い練習ができますね。
London Business Forum: https://www.youtube.com/@londonbusinessforum
Oscar Speech
私が生徒さんによくおすすめするニュース番組は、カナダのCTVニュースです。
カナダに留学していた、という方であれば特に、カナダに関するニュースは分かりやすいでしょう。
CTV News: https://www.youtube.com/@CTVNews