『世界コネクトプロジェクト2025』終了後に実施された参加者アンケートからは、国境を越えた協働におけるリアルな課題と学びが浮かび上がってきました。この記事ではカナダからの参加者と日本からの参加者がプロジェクトでの学習経験をどのように捉え、何を課題と考えたのかを紐解いてみたいと思います。

コミュニケーションの難しさ、その理由は?
本プロジェクトは最初から最後まで、同期・非同期コミュニケーションを繰り返しながら最終プレゼンテーションまで辿り着きましたが、思うようにコミュニケーションができない時もありました。
カナダからの参加者:「時差」が一番大きな障害
チームメイトとうまくコミュニケーションが取れなかった理由は何ですか?」という問いに対し、カナダの参加者の最多回答は「時差」。時差の関係でオンラインの連絡が取りづらく、全員が揃うタイミングが限られていたことがストレスの原因になったようです。それに続いて、「(日本人)チームメイトからの返信がなかなか返ってこなくて困った、という回答も目立ちました。
特筆すべきは、チームメンバーの参加態度も課題として挙げていた点。外的要因への敏感さが浮かび上がっています。
日本からの参加者:「自分の英語不足」が一番大きな障害
一方日本からの参加者の圧倒的多数が挙げたのは「自分の英語力不足」。
- もっと英語が話せたら、質問できたのに
- うまく返事ができなくて申し訳なかった
といった、自分の語学力への反省が中心で、他人や外部要因を問題視する声はほとんど見られませんでした。
💡 インサイト:
- カナダ側は「外的要因」(時差・態度)を問題視。
- 日本側は「内的要因」(語学力)を自己課題と認識。
💡 今後の改善ポイント:
- 日本側には語学支援+ツール操作のサポートを。
- カナダ側にはスケジュール柔軟性と、日本人へのリマインド文化の理解促進を。

チームメイトとのやりとりで一番楽しかったこと
「チームメイトとコミュニケーションする中で一番楽しかったことは何でしたか?」という問いでは、カナダと日本の参加者で印象的な違いが現れました。
カナダからの参加者:「人とのつながり」
カナダの参加者は「チームメイトと仲良くなれたこと」「人とのつながり」を挙げ、“交流”に価値を見出していたことがわかります。
日本からの参加者:「自分では思いつかないような考えを知れた」
日本の参加者は、「自分では思いつかないようなアイディアや考えを知れた」ことを第一に挙げ、異なる言語的・文化的背景を持つ人たちとの交流だったからこその強みを感じていました。また「英語で話せたこと」「通じたことが嬉しかった」など“言語を使えた達成感”に感動している傾向も見られました。
💡 インサイト:
- カナダ側は文化活動の異なる人たちと「話すこと」は日常
- 日本側は「異なる意見を聞くことの意義」が新鮮。
💡 今後の改善ポイント:
- 日本側には「英語で話せた!」という体験を積み重ねられる場づくりの他に、より深い相互理解を促進するような仕掛けが有効。
- カナダ側には、より深い議論を促すような問いかけ設計を。

次回どのようにチームワークを高められるか
チームワークについての振り返りも、参加国によって視点が異なりました。
カナダからの参加者:「チームメイトへ的確な指示を出す」
カナダの参加者は、「チームメイトへの的確な指示を出す」と回答。チーム全体が自分の役割を見つけて動くことを期待していた反面、指示待ちの日本人チームメイトが多かった感覚だったようです。これに続いて、「もっと頻繁にコミュニケーションをとる」と回答した参加者も多く、チームメイトに明確な指示を出し、できるだけ多くやり取りをすることで、チーム間のより良い理解が導けるのではないかと考えています。
日本からの参加者:「頻繁なコミュニケーション」&「自分の意見を共有する」
一方日本の参加者は「もっと頻繁に話せばよかった」「自分の意見を詳しく共有すべき」という声が多数。自らコミュニケーションを開始することが少なかった、また、自分のアイディアや考えを十分に伝えきれなかったと感じています。「準備不足」や「役割の不明確さ」にはあまり言及しておらず、そもそも発話のきっかけが少なかったことを悔やんでいる様子がありました。
💡 インサイト:
- カナダ側:「話しはしたけれど、いつまでに誰が何をすべきかもっと細かく指示を出してチームを動かせばよかった」
- 日本側:「そもそも、もっと話せばよかった」
💡 今後の改善ポイント:
- 発話のハードルを下げるアイスブレイクや導入アクティビティが効果的。
- 意見交換のトレーニングも併用すると効果的。

実データが示す「言語教育の効果」
このアンケート結果から見えてくるのは、本プロジェクトは単なる「英語発表プロジェクト」にとどまらず、参加者が自分自身と向き合い、異文化の他者と真剣に関わったからこそ得られた「言語教育の効果」です。
- 日本側の自己省察は、今後の語学学習や態度変容への動機づけになります。
- カナダ側の課題意識は、グローバルな協働の中での「配慮力」「進行力」へとつながっていきます。
こうした内面の成長を可視化できるのは、教育プロジェクトとして非常に意義のあるポイントです。
このように『世界コネクトプロジェクト2025』は、参加者一人ひとりが自らの課題を捉え、他者との違いを乗り越えるプロセスを通して「真の国際感覚」や「行動する力」を身につける場となりました。そして、そこに表れた国ごとの違い、参加者自身の悩みや喜びの声こそが、まさにこのプロジェクトが「生きた学び」の場である証です。

