世界コネクトプロジェクト2025報告レポート


「私たちが考えたのは、日本の“茶碗蒸し”を“Healthy pudding”として売り出すというアイデアなんです」
オンライン画面越しに発表する日本の学生の声が、参加者全員の心を惹きつけました。

2025年6月、カナダと日本をオンラインでつないで行われた『世界コネクトプロジェクト2025』(第3期)。国境を越えた約30名の学生たちが7つのチームに分かれ、文化と価値観を共有しながら、日本の商品をカナダ市場に売り出すための英語プレゼン(ピッチ)に挑戦しました。

このプロジェクトが特別だったのは、「英語で話すこと」以上の経験ができた点にあります。それは、「異なる文化背景を持つ他者と、本気で協働する」こと。英語を学ぶ目的が「テストのため」から「世界とつながるため」に変わる瞬間が、ここにありました。

英語を「学ぶ」から、「使って創る」へ

プロジェクトの課題は一見シンプルでした。「日本の商品をカナダ市場で売るための英語ピッチを作る」こと。
しかし、やってみると、その壁は決して低くありません。

たとえば、あるチームが選んだのは宮城県の特産品「笹かまぼこ」。ヘルシーで味のバリエーションも豊富。日本では老若男女に親しまれていますが、果たしてカナダ人にとってはどう見えるでしょう?

チームでのディスカッションでは、カナダ人学生から色々な質問が飛び出しました。
「日本の“Fish Cake”って何?Fish and Chipsと違うの?」
「スナックなの?それとも主食なの?」
「ベジタリアンが増えてるから、原材料も気になるかも」

これまで「当たり前」だと思っていた日本の価値観が、そのままでは海外では通用しないことを実感した瞬間。そこから議論が深まり、現地スーパーの販売スタイル、ピザのようにチーズを乗せるなど食べ方のバリエーション、SNSでのターゲティングなど、実践的なビジネス戦略まで考えるようになっていきました。

連日続いたインスタグループでの熱い議論

プロジェクト中、各チームはInstagramのグループチャットを使ってやり取りをしていました。プレゼンテーションの日が近づくにつれて、連日たくさんのディスカッションが流れてきます。文章で意見を伝えるだけでなく、音声メッセージを送りあったり、参考動画をシェアしたりするチームもありました。

あるカナダ人学生は、日本人人チームメイトにTEDトークのリンクを送りパブリックスピーチの参考にしてもらうことで、ただスクリプトを読むだけでは相手に伝わるプレゼンにはならないことを強調。また、日本人参加学生に発表スクリプトを送ってもらい、それを添削するカナダ人チームメイトもたくさんいました。さらにはスクリプトを読んだ音源を送り、日本人学生に繰り返し練習するよう示唆するチームも。英語のイントネーションや間の取り方、ジェスチャーの使い方まで、細かく意見をもらいながら、日々レベルアップしました。

またプレゼンで使用するスライドについては、「日本のプレゼンスライドは文字が多すぎる」「もっと視覚に訴える写真やキャッチコピーを」といったリアルな意見も。日本語では情報を順序立てて丁寧に説明する文化がありますが、英語圏では直感的なインパクトが重視されるという違いにも気づかされました。

英語ピッチの発表本番、画面越しの拍手と笑顔

プロジェクト最終日には、各チームによる英語ピッチ発表会が行われました。
自信を持って発表する学生たちの姿に、審査員として参加した教育関係者や後援団体も感心しきり。
プレゼンが終わるたびに拍手が飛び交い、参加者の表情にも達成感が溢れていました。

日本人参加学生からは、最初は英語を話すのも不安だったけど、チームメイトに助けられて自分が英語で発表ができたのが嬉しいという感想も聞かれました。

今回選んだトピックは以下の通り。それぞれに工夫を凝らしたピッチとなりました。
・茶碗蒸し
・ダイエットスリッパ
・金平糖
・温泉
・こたつ
・笹かまぼこ
・茶漉し付水筒

英語プレゼンに日本の起業家からの講評

今年の新たな試みとして、英語プレゼンを視聴する特別ゲストに、日本の現役起業家や企業社長を複数名招待いたしました。またNTTメディアサプライ社長およびfunique社長のお二人より、実際のビジネスを行う立場から学生たちのアイデアや提案に対してコメントを提供していただく貴重な機会を賜りました。

驚くべきことに複数のプレゼンに対して「そのまま商品企画会議に持っていきたい」という声も上がりました。
・ターゲット層の明確化
・SNS戦略の実用性
・ストーリーテリング
みんなカナダ市場で売るという前提をしっかり見据えて、ディスカッションを重ねてきたことが分かり、なかなか面白いアイディアがあったというコメントをいただきました。

今回のプロジェクトでは売上や経費の計算などは焦点ではなく、あくまでもカナダ市場で売るという文脈のもとどのような情報が必要かをチームメイトとできるだけ深く英語でディスカッションすること、また、時間内にチームの作業を終わらせることなどを重視しましたが、新市場での課題や、この先10年の売上見通しまで考えてきたチームもあり、完成度の高いプレゼンとなりました。


参加学生の皆様には英語だけでなく「ビジネスの実践力」や「グローバルマーケティングの視点」を考える時間があったように思います。学びが語学教育を超えて、現実の社会とつながった瞬間だと感じました。

英語を“話す”から、“伝える”へ

このプロジェクトで学んでいただきたかったことは「相手の背景を理解し、価値観を受け入れながら『どうすれば伝わるか』を本気で考え抜くこと」そして「それを実践するようチャレンジすること」です。

それは教室に座って勉強する座学の英語からは決して得られない生きた学びです。

・相手の文化を尊重しながらアイデアを伝える
・自分の意見を持ちつつ、チームの調和を保つ
・時間内にプロジェクトを完成させる責任感

こうした力は、これからのグローバル社会において何より求められるスキルで、本プロジェクトを通して参加学生の皆様はこのスキルを体感し、実践し、自分の一部とすることができたのではないかと思います。

公的機関の後援が示す信頼と期待

この『世界コネクトプロジェクト2025』は、各企業様からの協賛とともに、在バンクーバー日本国総領事館、国際交流基金トロント日本文化センターなどの後援を受けて実施されました。単なる教育イベントではなく、日加両国の未来を担う若者たちの交流と成長を支える重要なプロジェクトであることの証でもあります。

協賛++++++++++
NTT MEDIA SUPPLY CO., LTD
funique LLC
tsutsuku LLC
Optima Ventures Inc.
東京書籍

後援++++++++++
在バンクーバー日本国総領事館
国際交流基金
大阪学院大学

参加者の声

プロジェクト後のアンケートでは、「もし次回もう一度参加する場合、チームワークをもっと高めるために自分は何ができると思いますか」という質問を投げかけています。毎年聞かれる声ではありますが、今年も大多数の日本人参加学生から、

もっと積極的にディスカッションに参加する。
もっと自分の意見を投げかける。
英語力を伸ばして能動的に動く。
初めは調べながらでもいいから少しでも英語を使う。

という声が聞かれました。
日本人はなかなか積極的に英語で話さないとよく言われますが、
「積極的に話すということはどういうことか」
「どうしたら最初の一歩が踏み出せるのか」
は、実際に体感してこそわかることでしょう。

本プロジェクトを通して多くの学生がコミュニケーションの大切さを身をもって体験し、一人ひとりのこれからを変える力になってくれるといいなと思います。

来年度も開催決定!もっと広く、もっと深く

このたび無事に終了した『世界コネクトプロジェクト2025』は、来年度さらにパワーアップしての開催を予定しております。
プレゼンテーションのテーマも、今年のアントレプレナーシップに続き、社会課題やAIなど、世界の若者と一緒に話し合いたいトピックを企画中。

英語を学ぶ、ではなく、英語で未来を創る。
そんな学びの場を、本プロジェクトを通して引き続き提供してまいります

「英語を使って世界とつながりたい」
「でも、自信がない」「話すのが怖い」

そんなふうに思っている日本人はたくさんいるはず。
そんな日本の文化を伝統を技術を知りたい・学びたいと思っている世界の若者もたくさんいるのです。

この二者を繋ぎ、未来を創る力を育成することを目的とする『世界コネクトプロジェクト』は、英語力を超えて【世界と協働し課題を成し遂げる力】を大切にする場所です。
参加者のアイディアや感性が世界に貢献する瞬間を、私たちはこれからも全力でサポートいたします。

最後になりましたが、『世界コネクトプロジェクト2025』にご協賛いただきました全ての方々に
厚く御礼を申し上げます。


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