英語を話すときに意外と難しいのが/l/の発音。日本語の「ラ行」ともまた違うこの音は日本語にはないため、出せているようで実は出せていないことも。日本語話者にとっては「LとRの違い」が有名ですが、実は「Lの中にも2種類の発音」があることをご存知でしょうか?
この記事ではまず、日本語の「ラ行」と英語の/l/音の違いを説明し、二つのLを紹介しながらそれぞれの発音がどんなときに使われ、どうやって舌を動かすのかを解説したいと思います。音源もつけているので、聞き比べてみてくださいね。
日本語の「ラ行」と英語の「L音」は違う
英語の /l/ の発音を学ぶ前にまず確認しておきたいのが、日本語の「ラ行」との違いです。多くの日本語話者は、英語の /l/ の音を「ラ行」で代用して発音しがちですが、実はこの二つの音は、舌の動きも音の響きもまったく異なるって知っていましたか??
日本語の「ラ行」
- 舌先が 上あごに触れるか触れないかくらいで、軽く弾くように「ラ・リ・ル・レ・ロ」と発音します。
- 舌の位置は比較的短くて浅い動きで済みます。
- 実際の「ラ行」の音は英語話者の耳には「L」よりもむしろ「D」に近い音のように聞こえることが多いです。
日本語のラ行は英語の「R」とは違うことはみなさんご存知だと思いますが、実は「L」とも異なり、ちょうど中間点にある音といえます。
英語の/l/の発音は?
さて、ここからが本番です。英語の /r/音はかなり特有な音であるため、英語を学習するときによく話題にされますね。それに対して/l/はラ行で代用すればいいさ!と思いがちですが、実は/l/ももう少し注目してあげたい音なんですよ。/l/がもっとしっかり正しく出せるようになるだけで、英語のスピーキングレベルもぐんっと上がります。
私は舌の位置で英語の発音を教えています。これは、耳で聞き取りにくい音でも、舌を正しい位置におけば比較的どなたでもある程度正しい音が出せるようになるからです。私自身も実は音の聞き取りが昔からあまり得意ではなかったため、この方法の指導を続けてきています。
/l/の音の時、舌は以下のように使います。
- 舌先を【上の歯の歯茎のすぐ裏】にしっかりしっかりしっっっっかり押し当てる
- 押し当てながら、思っているよりも少し長めに/l/音を出す
発音の位置と舌の形が明確に決まっているので、そこに舌を持っていけばきちんと/l/音が聞こえるはずです!日本語のラ行の時は、/l/音よりも舌は少し【奥に】行っているので、日本語の感覚のまま発音すると全く違う音に聞こえてしまいます。このように、英語の /l/ をきちんと発音するためには、「ラ行とは別物」と認識して、舌の位置や動かし方を一から練習する必要がありますね。
さて次は、英語の「L音」には【実は2種類ある】についてです。それぞれどんな音で、どう発音すればよいのでしょうか?
ここからは、Clear L(クリア・エル)とDark L(ダーク・エル)という2つのタイプの/l/を、舌の位置の違いを交えて詳しく解説していきます。
Clear LとDark Lの違いと使い分け
英語を話すときに意外と難しいのが「/l/」の発音。日本語にはない音のため、日本人にとっては「LとRの違い」が有名ですが、実は「Lの中にも2種類の発音」があることをご存知でしょうか?
その2種類とは、Clear L(クリア・エル)とDark L(ダーク・エル)です。
どうして2種類あるのか?
英語の発音は、単語の位置や周囲の音によって微妙に変化することがあります。/l/ の音も例外ではなく、語頭や語中に来るときの /l/ と、語尾に来るときの /l/ は音の質が変わります。
- Clear L(明るいL)
舌の前方を主に使い、舌先をくっつけて発音するはっきりとした音。 - Dark L(暗いL)
舌先はどこにもつけず、こもったような音。
Clear Lとは?
特徴:
- 舌先を上の前歯の裏(歯茎)につけて、しっかりとLの音を出す。
- 舌の前方がメインで使われる。
- 明るく、はっきりした音になる。
- 通常、語頭や母音の前に現れる。
例:
light /laɪt/
love /lʌv/
leap /liːp/
発音のコツ:
「ラ行」を思い出すと少し近いですが、日本語の「ラ」は舌が口の上に触れませんね。一方英語の clear L は【しっかり舌先を上につけて押す】ことが重要です。鏡を見ながら、舌の先が歯茎に触れているか確認しましょう!
Clear Lの音源を聞いてみる
Dark Lとは?
特徴:
- 舌先が歯茎に触れることもあるが、舌の後方(舌の根元)を持ち上げるのがポイント。
- 音が少し「ウ」に近く、こもったような響きになる。
- 通常、語尾や子音の後、母音の後ろに現れる。
例:
milk /mɪlk/
full /fʊl/
pool /puːl/
発音のコツ:
Dark L は日本語にない音なので、最初は違和感があるかもしれません。「ウ」と「オ」の中間のような音を出しながら、舌の奥をグッと上げるような感覚を練習しましょう。舌先を/l/の場所につける人もいますが、Clear Lの時のようにしっかり押し付けるという感覚はありません。むしろ舌先は口の中の【ちょっと前の方で宙に浮かせたまま】発音した方がDark Lっぽくなります。録音して自分なりのClear LとDark Lが違う音として発音できているか確認すると、効果的です。
Dark Lの音源を聞いてみる
Clear LとDark Lの違いと使い分け
「Lの音はひとつ」と思い込んでいると、文全体を読んだときにどこか不自然に聞こえたり、英語話者に通じにくいこともあります。これは以前私の周りで起こったことですが、英語初級者の日本人が英語で電話を取ったときに、電話での英語は苦手だから代わってほしいと言われました。代わる前に電話先の方のお名前を聞くと、「『舞子さん』っておっしゃるんですけど、男性の声なんですよね…」。わかりますか?MaikoさんではなくMichaelさんですね。Michaelの最後のLはDark Lで発音されるため、日本語話者の耳にはほとんど聞こえないのです。なので「マイコー」に聞こえたのでしょう。
私たち日本語話者にとってClear LとDark Lの違いはあまり大きくなくても、英語話者にとってはこの違いが非常に大きいため、リスニングにも影響します。「聞き取れる音は、自分で発音できる音」だと私はよく言うのですが、だからこそClear L と Dark L の違いを知ることは、発音練習だけでなくリスニング向上にも直結するのです!
- 語頭や母音の前 → Clear L(明るい)
- 語尾や子音の後 → Dark L(暗い)
まずは単語の中に出てくる/l/音がClearかDarkを見極め、単語単位で練習してみてください。
その後で、その単語を文章に入れてみて、文章単位で練習しましょう。咄嗟にClearかDarkそれぞれ正しい位置に舌を動かせましたか?
発音の学習は「舌の位置を知る」段階でまだ2割です。そこからの8割はただひたすら反復練習にあります。繰り返し練習している間にだんだん正しい音からずれてしまうこともあるんですね。そうすると、正しいと思っていたのに間違った音の練習をしてしまっていた!という悲しい結果になりかねません。私のレッスンでは、間違った練習をしていないか定期的に確認し微調整をして、正しい発音が身につくまで一緒に練習します。
地道ですが、みなさんも一つひとつ丁寧に頑張ってくださいね。