「書かない」英語の授業:コミュニケーション力育成を目指して


授業中こそ大事

「先生、ホワイトボードはどこにつけましょうか?」
教室を移動するとスタッフが丁寧に聞いてくれます。先生によってはホワイトボードの位置にこだわる方もいらっしゃるからです。私の答えはいつも、
「どこでもいいよ」
「というか、なくてもいいよ」

なので、新しいスタッフは奇妙な顔をします。
私、授業でほとんど書かないのです。
書くとすると、キリンにしか見えない恐竜の絵とか。

最近では、「覚えなくても英語のスピーキングができる」といった感じの文言もちょこちょこ見ますが、私はやはり、第二言語習得はある程度の、いえ、相当程度のものを覚えていくことが結局近道だと考えています。

ただその「覚え方」が大事です。

暗記が比較的得意な生徒も、苦手な生徒も、これまできっとやったことのなかった方法で頭の中を動かす練習をしてもらっています。それは、

「書く」という作業をできる限り排除して覚える方法、です。

授業中もホワイトボードには書かずに、ほぼ100%話して進めます。聞いていなかったらそれまで、という教室文化を作り出します。「それってひどいじゃないか!」という生徒もいますが、授業時間にこそ脳を活性化させて集中して取り組む、という緊張感に、生徒も次第に慣れていきます。

メモリ活性化現象

私がこれまで受け入れてきた生徒を振り返ると、大多数の方が、英語学習でノートに書いたりメモを取ったりポストイットを貼りまくるのが好きでした。
覚えたことを口から出す」という作業が、「覚えようとひたすら書く」作業に変換されていては、英語のコミュニケーション力はなかなかつかないのです。

そこで私は「メモリ活性化現象」を導入します。

好きな人の電話番号をメモしながら聞くと、書くことに頼ってしまってあまり頭に残らないけど、「書くものがない!」という時に大事な電話番号を聞くと、「絶対に覚えないと…!」とメモリが活性化されるものでしょう。
簡単に言うと、集中力の違い、なのでしょうが。

授業中にこの方法にトライしてもらうよう、いろいろな方法で試し続けてきていますが、みんな思ったより覚えてくれるんですね。「思ったより」というのは、

私が教師として期待した以上に覚えてくるし、
生徒本人も自分自身ができると思った以上に覚えてくる
、のだそうです。

そしてなにより、頭にしっかり入ったものは、すぐに使えるものですね。

この回路が生み出せると、スピーキングもより上のレベルを狙えるし、狙いたくなるようです。ここからようやく、英語学習が本当の意味で少し楽しくなるのかもしれないと、生徒を見て思います。

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