学習者のアンデンティティ
私のクラスに興味を持ってくれる生徒さんは、英語が話せるようになりたいと思っている方で、中には
・TOEIC900点以上お持ちの方
・大学教授の方
・アメリカの大学を卒業された方
・カナダの大学院を卒業された方
もいらっしゃいました。
それでも英語が「話せている」と感じていないんですね。
その理由はおそらく、英語=テスト・英語=座学、という認識で英語の学習をされてきたからかとも思います。一方私はかなり限られた「数週間」というタームの中で、目に見える形でスピーキング力を上げる仕事に携わってきているので、英語の授業を始める前にいつも少し、
アイデンティティのお話をするんです。
特に中級以上の英語学習者の皆さんには、
英語上級話者としての自覚を早く持ちなさい
とお話しします。
何年英語の勉強をしたら初級を脱出?
多くの日本人学習者は「いつまで経っても初級者のアイデンティティ」を引きずっていると言われることがあります。英会話学校に3年通っても5年通っても、ずっと「私はまだ話せないし…」と思っておられる場合ですね。
それに対して、私が知っている、日本語のクラスを受講しているカナダの大学生の場合。大学1年生からクラスを取り始め、大学3年生あたりになると多くの方がかなり堂々と日本語を話すんですよね。大学の日本語の先生と一緒にキャンパスを歩いていたら日本語で
「先生、こんにちは!今日はどこでお昼をお食べになるんですか?」
と学生に話しかけられたんです。
日本語上手だし、堂々と話しかけてきたので、後で先生に
「日系の学生さんですか?」と伺ったら
「いいえ、1年生の時から日本語を始めた、今3年生の学生ですよ。」と。
そのクラスと何度もジョイントレッスンをさせていただきましたが、他の学生さんからも似たような雰囲気を感じて驚いたのを覚えています。
3年学んでいたら、もう自分は中級話者だってしっかり思っておられるんだろうな、と。
「自分はもうこの言語で初級者じゃない」と思うことが、あなたの学習に一体どんな影響を及ぼすんだろう?と思いますよね。私は授業の始め(だけではなく途中も笑)にこういった話を継続的に盛り込みながら、生徒が英語学習をする際に自分をどうとらえているのか、と向き合うよう促してきていますが、多くの生徒さんが自ずから変化を見せ始めてくれるんです。いつも、学習者のポテンシャルってすごいな、と思わされる瞬間でもあります。
自分の英語を気にし始めることの大切さ
簡単に言うと、
初級者だから間違って当たり前ですよね。自信もありません。
というアイデンティティにしがみついていると、いつまで経っても間違っているかもしれないという怖れから抜け出せず、声も小さく、自信なさげな話し方をしてしまいがちです。
一方、私はもう中上級者だから…と思うと、
「文法的にこれで合ってるかな?」
「発音はこれで合ってるかな?」
「この単語で合ってるかな?」
と、【自分確認】を始めるんですね。冠詞抜けや、三単元のs抜けや、時制の間違いなどは、このレベルでしちゃだめでしょう!と自分で思えるようになるからです。
この【自分確認】ーーー私はこのことをクラスでよく駅のホームの駅員さんに例えて「指差し確認」とも言うのですがーーーを始めると、学習者はぐんっと伸びていきます。もちろん私からのアドバイスも続けますが、多くの生徒さんが「自分で自分の出来栄えを気にし始める」と、「ま、伝わればいっかー」と適当に話すのを止め、口から出す英語を「気にし始める」ものです。
適度に気にすること。
中級からなかなか抜け出せないとお悩みの場合は、大切な要素かもしれません。