「生きた英語」解釈
「生きた英語を学ぼう」とよく言われますね。それに便乗して、「ネイティブ英語話者が使う表現100!」とかいった表現もよく見ます。ではそういう本を読み漁ったらいわゆる「生きた英語」が身につく=使えるようになるのか…私は長年カナダで英語を教える中で疑問を抱いてきています。
今日はこの場をお借りして、私が自分の生徒によく言ってきた、いわゆる「生きた英語」とは何か、そしてそれを身に着ける方法をぜひシェアさせていただきたいと思います。
学生からよく「〜って英語でどーやって言うんですか?」と聞かれます。簡単な文章や単純な言い回しは学生も知っているので、逆にこうやって聞かれる文章のほとんどがちょっとやっかいだったり、ニュアンスが微妙だったり、といったことが多いです。そしてそういった文章こそ、
どんな状況で
誰が誰に
どういった目的で
言っているのか、がとても重要になってくるのです。
が、せっかちな学生は「とりあえず、一般的になんて言うか教えてください」と笑。でも英語の教師としてはとりあえずの答えはあまり言いたくないわけでして笑。
「○○って英語でどう言ったらいいんですか?」
あるお店で「日頃ご愛顧いただいているお客様ありき、でございます!」という看板を英語で出したい、という話がありました。ではまずは、Google翻訳に聞いてみよう。
Our shop Ki have customers who have our patronage, there will be
これは明らかに伝わらないですよね…。
あるメッセージを別言語で言う、というのは、「一語一語辞書で拾ってくっつけるという作業」というよりも、「そのメッセージを聞いた/読んだ時に頭の中にほわほわっというイメージになった意味を、別言語で言い表していく」といった方が近いかと思います。
そして、その「言い表していく」際に必要なのが「生きた英語」なのです。
上記のメッセージを英語にするなら、私は生徒にまず似たような状況で使われている英語表現を探しに行くことを勧めています。そのメッセージは高級レストランに掲げるものなのか、ブティックなのか、パン屋さんなのか・・・によって、できるだけ同じようなお店をチェックします。そしてそこで使われている表現こそが、私は「生きた英語」だと思うのです。
たまたまドーナツ屋さん(Tim Hortons)で見つけた看板の例です。お決まりの赤い看板には、
Guest First. We Care About Making You Happy.
と書いてありました。一語一句言葉を当てはめたものより「生きて」いると思いませんか?このように、似たような状況で使われているフレーズを状況と一緒にため込んだものを、その状況下で出せる力、というのが、生きた英語を使うことができる力だと考えています。
いわゆる「生きた英語」を効果的に習得するために私が出す課題
なので私は自分の学生にいつもこういった週末課題を与えるのです。
「街をゆっくり歩こう」
いえ、もちろん、歩くことが目的ではなく。ゆっくり歩きながら目に入ってくるおもしろい英語表現や、以前は知らなかったけど今だからこそわかるようになった英単語を見つけたら、写真に撮ったり書き留めておこう、という課題なのです。
そして少し慣れて来たら、「スーパーと薬局へ行こう」という課題も出しています。
お店で使われている表現をできるだけ覚えてこよう、というものです。看板でもいいし、商品のラベルでもいい。普段は買いたいものしか見えていないのですが、課題の時はみんな一個一個商品を手にとっては「これ、『アレルギーテスト済み』ってことだ。書き方違うのね。」とか「『老化防止クリーム』ってこう言うんだ」と、目をキラキラさせながら宝物探しをしてくれます。
これから社会に出て日本語も英語も使いながら生きていく若者が英語を学ぶということは、だらだらと英会話を続けることではないと私は思っています。
ある学生が教えてくれたことがあります。レッスンが進むにつれて、そういった生きた英語が向こう側から目に飛び込んでくるようになるんだそうです。それまでは周りを見てもわからないことが多すぎて注意を払うこともなかったのに、あちら側から飛び込んでくるというのは、モチベーションも上がりますよね。
「だから、いろんな所に行くのが楽しくって!この間はスーパーで丸1日過ごしちゃいました」
そんな日本人英語学習者を、もっともっともっともっと増やしたいと思いながら、私は今日も教壇に立ちます。