「カナダに来たら英語が話せるようになる」とは詳しくはどういうこと?


海外留学の理由?

英語の勉強は日本でできるーー確かに何の勉強でもやり方さえ考えれば、場所を選ばないのかもしれません。

それでも海外で勉強したいと思う人は、たくさんいますね。カナダに来た日本人の留学生と話している時に私がよく聞くのは、英語のテストで点数が取れる勉強というよりも、話せるようになる勉強がしたい、ということです。ごもっともです。

海外留学をする理由は、確かにそこにあると思っています。そうであるならば、ホストファミリーや友達となんとなく話して、なんとなくわかってもらって、なんとなく帰国するのではもったいないですね。

私がカナダで英語スピーキングを教える際にいつも、

自分らしい英語を
自分らしい言い方で
自分の年齢やキャリアにあったような英語で
自分を表していく英語を、

人前で話す機会を持ちながら
「できた」「できなかった」と一喜一憂し
成功例からモチベーションを上げ
失敗例からは次回に向けて課題を学び
恥ずかしい思いと悔しい思いも繰り返しながら
自分の文化も今まで以上に強く感じ始め
日本語を話す時との違いも感じ始め
じゃあ自分はどういった英語を身につけたいのかを模索する

という過程をとても大切にしています。

カナダにいれば英語が話せるようになる」とは具体的に?

「カナダに一年もいれば、ある程度は英語を話せるようになるでしょう」とよく言われます。
私ならば「はい、ある程度は」とお答えするかもしれません。
そしてその「ある程度」で満足する人もいれば、フラストレーションがたまる人もいるようですね。私のレッスンを受講する方はどちらかというと後者の方々が多いでしょうか。つまり多くの方が、「カナダに来たら英語がしゃべれるようになるってみんなに言われて来ました。自分もそう思ってたのですが…違ったんですね!」と心底お気づきになります。

できることなれば、こうして後悔する方の数をもとから減らしたいとも思いながら、このブログを書いています。ブラジルに行ったら上手にサッカーできるようになるわけではなく、オーストリアに行ったら上手にピアノが弾けるようになるわけではないように、カナダに来たら上手に英語が話せるようになるわけではないですね。そのスキルがいたるところで見られたりいたるところで披露したりされている場所であれども、そこに行くだけでは、やはりスキルアップにはなかなかつながらないものです。

それでもカナダに行ったら英語が話せるようになる、と言われ続ける理由はきっと、英語が毎日いたるところで使われているという環境の中で勉強すれば、それを使う機会がすぐに見つけられるから。もしくは使わないと生活が回らないという場所だと、「使う機会」というか「使わざるを得ない機会」があふれているから、だと思います。

「第二言語」としての英語とは?

いわゆるEFL (English as a foreign language)とESL (English as a second language)の違いですね。

ESLの環境下ではこの「使わないとにっちもさっちもいかない」という状況も溢れているので、まだ自信がないからと言っても、待ったなしの時があります。そういった追い風のような環境に身を投じ、さらにそれをチャンスだと思って有効活用するのであれば、英語はより効率的に話せるようになるでしょう。

カナダで20年も生活していればこの、待ったなしの機会は雨霰と降ってきます。
買ったフルーツジュースが変な匂いだった時。問い合わせフォームから英語で連絡します。もしくは電話で状況を説明します。できればリファンドしたいです。
買ったシャツのボタンが取れていたのに気づかず、既に値札も切り取ってレシートも捨ててしまっていた時。服屋の問い合わせフォームで英語で説明します。できればボタンが取れていない同じ商品を交換したいです。
投資信託を購入する時。自分の生活様式に合っていて、なるべく損しないプランはどれなのか、しっかり情報を得たいです。
帰宅途中に交通事故に遭い、鞭打ちに打撲の中、警察や救急の人には事故の時の状況をできるだけ正確に伝えたいです。もらい事故だったので、自分には過失がないことをきちんと説明したいです。
陣痛中、人生で初めての痛みと闘っている時、赤ちゃんの心音がきちんと聞こえているか、痛みが後どれくらい続くのか、その後はどうなっていくのか、ドクターに聞きたいです。

これはすべて私自身が経験してきた「英語を使って事を進める状況」例のほんのひとにぎりです。

英語学習ではレッスンと同じくらい大切な、二つ目の要素

さて。
カナダに来て生活をしながら英語の勉強をすることが効率よく学習者の英語コミュニケーションスキルを上げるとすれば、たぬき寝入りをせずに、自分が必要以上の損をかぶらないように、どうやったらその場を切り抜けられるかーーーという経験が少しでもあればと思います。

そんな思いを抱き、自分の生徒さんにはレッスンと同じくらい大切な機会だと思ってほしいと常日頃述べているのが、現地の人たちと状況設定をしたコミュニケーションです。
例えば私はよく、カナダの学校へ日本人の生徒を連れていきます。そしてそこで、日本文化に関するプレゼンテーションやゲームを英語で披露してもらうのです。いろいろなリハーサルはたくさんたくさん行います。ただ、本番は本当に何が起こるかわからないわけで。自分が言ったことがうまく伝わらなかったり、プレゼンの途中でオーディエンスが飽きて遊び始めたり、ゲームの説明がうまく通じなかったり、ゲームがあまり盛り上がらなかったり、笑いどころと思ったところで笑いが取れなかったり、逆に普通の内容の部分でやたらウケたり。何があっても、本番中、私は基本的には口も出しませんし助けもしません。「自分の英語で切り抜ける」という体験をさせたいのです。

終了後、参加学生はみな疲弊し切った顔をしていますが、今持てる全てを出し切った!という清々しい顔もしています。そして実体験から感じ取った成功は、学習者一人ひとりの中で揺らぎない自信に形を変えます。逆に失敗は大きな声となって、次なる課題と目標を設定してくれます。教師である私が何も言わなくとも、生徒が自律的に学習を進めてくれる瞬間だと思っています。

カナダ(だけではなくあらゆる留学体験や海外研修)に来たら、ぜひそういった体験をしてほしいなと思うのです。

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