医者や看護師、理学療法士や歯科医、医学部や看護学科の学生さんなど、カナダに留学中の医療従事者の方にかなりたくさん出会ってきました。帰国後、医療現場で英語を使いたいと希望するそういった方々にとって、最短3日でもできる、私自身も受講した超充実実践型のプランをご紹介したいと思います。
留学しても英語が話せるようにならない??
今日は特に「医療系で働く日本人の方」に向けて、ちょっと真面目な留学の話をしたいと思います。
私が担当した医療系生徒さんの多くは、留学で結構本気で英語をマスターして、帰国後にすぐに職場で使っていきたいと切実に考えておられました。にもかかわらず、
「カナダに語学留学したけど、結局英語が話せるようになった実感がない」
「ESLクラスは楽しかったけど、仕事で使える英語力がついたかは微妙」
という悩みをたくさん聞きます。
医療従事者の方々が英語を話せるようになることは、外国人労働者や移民が増えることが明らかに予想される今の日本社会にとっても重要なこと。もともと素晴らしいスキルを持つそんな留学生の方々に、何か心からお勧めできるプランはないだろうか・・・と私自身もずっと模索・検索してきました。確かにカナダはESLスクールもたくさんあって、生活環境も英語だらけ。
でもただ授業を「聞くだけ」、クラスでちょっと発言するだけでは、「実際に病院で指示を出したり患者さんに説明したり」というレベルの英語はなかなか身につきません。
つまり医療職の方の場合は、「日常会話」以上の英語を目指しておられると思うのです。
3日間留学でも可能な超充実プラン
じゃあ、どうすればいいのか。
答えはシンプルです。
「英語を学ぶ」のではなく「英語で学ぶ」体験をすること。
それも、医療分野で超高濃度の実践体験を英語ですること。
先日自分自身が受講してきたコースでそれができるのではないかと、実体験してきたところなのが、
カナダのFirst Aider(応急手当・救急救命)コース
なんです。私自身が受けてきたのが、バンクーバーのVida First Aidが提供しているRed Cross認定のFirst Aiderコース。これは外国人留学生でも受けられる、ちゃんとした公式プログラム。
しかもすごいのが、超短期でも受けられるというところ。
座学部分をオンラインで済ませておけば、現地での実技は半日〜1日だけでOKなので、最短3日ほどしか時間が取れないという方でも実行可能です。
なので長期留学の途中はもちろん、
「ちょっとカナダ行ってみようかな」という短期滞在でも挑戦できます。
そして何より、
- 医療の専門用語を英語で覚えられる
- 現場のスピードで、英語の指示を聞き取る
- 患者役や救助者役を英語で演じる
こういう「実戦的な英語体験」ができる場所なんです。
語学学校では味わえない、医療職だからこそ価値のある留学体験。今回はそれをたっぷりご紹介したいと思います。
First Aiderコースって?
応急手当コース
そもそも「First Aider」とは「応急手当を正式に学んだ人」という意味です。
カナダのRed Crossプログラムもいろいろありますが、私が受けたのは Emergency First Aid + CRP-C/AED Blended Learningというもの。
- 心肺蘇生法(CPR)
- AED使用法
- 呼吸停止時の対応
- 大量出血の止血
- 骨折や捻挫の固定
- ショックの兆候と対応
- 窒息解除
- 二次評価と継続的観察
など、現場を想定した幅広い知識とスキルを学びました。
公式修了証
またコースを修了すると、Red Cross(カナダ赤十字)の公式の修了証が発行されます。これはカナダ国内の多くの職場で「First Aid資格保持者」として認められるもの。留学中のボランティア先、介護施設、子ども向けプログラムなどでも役立ちます。
留学生でも受講可能
「英語が母語じゃないけど大丈夫?」と心配する方もいます。安心してください。
このFirst Aidコースはカナダ国内で働く全員を対象にしているので、もちろん移民や留学生も受講対象。
講師も多様なバックグラウンドを持つ生徒に慣れていてしっかり説明する、質問を受ける、毎回理解を確認する、などの指導スタイルが確立されています。
ただ留学生だからといって、ゆっくり話してくれるわけではありません。
なのでリアルな現場での英語にどっぷり浸かることができるのも、カナダで受講するからこその特徴です。
医療従事者だからこそわかるポイント
英語で受講するけれども、First Aiderコースの用語や手技って、医療職の人なら日本語ではすでに理解していることが多いですよね。
- airway(気道)
- breathing(呼吸)
- circulation(循環)
- responsiveness(意識レベル)
- shock(ショック)
など、普段の現場や勉強でなじみがある単語を「英語で正確に覚える」感じです。医療知識がゼロの私でも受講後は頭にこびりつくくらい、4時間ほどの実践中に何度も何度も繰り返し聞いて言ってを繰り返しました。通常学校では「この英語表現を覚えましょう」と教わりますが、このFirst Aiderコースでは、英語で説明を受け、質問をされ、答えを返し、実技を行います。
座学だけじゃない:英語で実践
さて、ここからはFirst Aiderコースの一番の魅力、「実技授業」の話をしたいと思います。
学校の座学では、座って先生の話を聞いたりメモを取る時間が多いですよね。「うんうん、わかる」と思っても、実際に自分が口を開くのは授業中の数分程度。発言を当てられても、簡単な自己紹介や日常会話の延長で終わってしまう。
でも、First Aiderコースはまったく違います!
先生がどんどん質問してくる
生徒がきちんと学んできたかを確認するために、実技授業ではインストラクターが生徒にどんどん問いかけます。
- 「How do you check responsiveness?」
- 「What’s the first thing you do when you see a person lying on the floor?」
- 「Can you show me how to take care of life-threatening bleeding?」
これを聞き取れなければ何もできませんし、答えなければ次に進めません・・・実際には他の受講者が答えれば次には進めますが、基本的には少人数で実施される授業なので、4時間ずっと何も答えないーーでは気まずいですし、知識が入っていないのではないかとインストラクターに思われるので認定されない可能性も出てきます。
ちなみに私が受講した時は運良く(!?)かなりの少人数で、私含めて3名だけでした。
「英語で聞いて理解して、すぐに返す」という本当の意味でのコミュニケーションが求められ、最初はドキドキしますがこれこそ実戦。内容は皆さんがよくご存知の基礎的な救急法なので、その知識自体も大きな手助けとなりますね。
ロールプレイが豊富
もう一つ大きなポイントは、ロールプレイが非常に多いこと。
「あなたがFirst Aider役」「相手が患者役」というペアワークばかりで実技授業は進みます。
例えば一人が患者役、一人がFirst Aider役、一人がそこに居合わせた人役、という3人1組でのロールプレイでは、
First Aider: “Hi, do you know what happened to him?”
By-stander: “No, I just found him lying on the floor.”
First Aider: “Hello, hello, hello!! Can you hear me, hello!!?” (Tap the patient’s shoulders.)
(No response.)
First Aider: (Check the patient’s ABCs.) “Can you call 911 and keep the speaker on. Can you also get me a first aid kid and AED?”
By-stander: “Yes, for sure.”
のように、実際に自分の口で英語の指示を出すやりとりをものすごいスピードで練習します。インストラクターが最初にお手本を見せてくれるのですが、結構リアルなシチュエーションと同じくらいのスピードで話すので、実践感満載です。
全員がアクティブ参加型
受講生全員が座って講師のデモを見て、指名された人だけ前でやる…という形式をよく聞きますが、私が受けたこのコースでは全員が順番に、あるいは同時にペアやグループで動き、全員が上記3つの役割全てを経験しました。
その間インストラクターもずっと観察して回り、細かくアドバイスをくれます。
私はCPRの時に患者の口の上に被せるプラスチックのマスクの固定がうまくいかず、息が漏れてしまって肺に入らないことがありました。CPRは “two ATTEMPTED breathing”なので入っても入らなくてもとにかく2回終えたら心臓マッサージに移るのですが、あまりにも入っていないのを見つけたインスタラクターがすぐに側に来て、マスクの位置調整と、固定する手の形を変えてくれました。
またインストラクターは時々その場で指示を飛ばして、
予期せぬ状況の時にどう対応するかも観察します。
例えばAEDを使う実践練習の時に、インストラクターが突然患者の友達役をして “Is my friend okay?!”と割り込んで患者の体に触りました。それを見て “I’m using AED. Everyone, stay away. Don’t touch him!”と言えないといけません。
医療従事者の方の場合AEDの使い方自体はすでにご存知だと思いますが、それを英語でリアルに実践練習をするというのはなかなか貴重な体験です。
受け身で座っていられない。
まさに医療英語の実践です。
英語で救命ができることで広がる道
病院の中だけではなく、街を歩いている時にも命を助ける機会はあります。
そして日本に住む外国人の数が加速度的に増え始め、これからも増えるであろう今、日本にいながらもこれらを英語で行うことができるスキルというのは重宝されるでしょう。
救急時に患者への指示出しや説明、また患者自身は意識がない時でも患者の家族や友達への指示出しや説明が日本語でも英語でもできる医療従事者が、これからますます求められる時代になるでしょう。
- 「呼吸していないので救急車を呼びます」
- 「もしかしたら後で体の不調が出てくるかもしれないので、病院で診てもらってください」
など。英語でスムーズに言うのは、練習していなければ無理です。
このコースでは「覚えなさい」と言われるのではなく、「言わないと進まない」状況が生まれます。
だから、嫌でも口から出るようになる。
これは本当に大きな学びです。
救命コース全体の流れ
いくつか異なるコースがありますが、人気なのが
・Standard First Aid with CPR-C/AED:オンライン座学+7時間実技
・Emergency First Aid with CPR-C/AED:オンライン座学+4.5時間実技
Blended Course(オンライン+実技)
どちらもblended courseといって、オンラインの座学部分は先に自分のペースで終わらせることができます。
申し込みをするとCanadian Red Crossのオンラインコンテンツにアクセスできるので、全体のボリュームを見ながら実技授業までに終わらせましょう。コンテンツは基本的にデジタル教科書のような形で読み進めます。ところどころでKnowlege Testというミニテストがあったり、動画を見ながらナレーションを聞くスタイルもあります。
このように座学だけでも、「読む」「聞く」をしっかり練習できます。
対面実技授業は半日〜1日
そして座学を終えたら、次は現地での実技授業です。私が受けた場所では実技は午前8時半から午後1時くらいまでの4時間〜4時間半ほど。「えっ、そんな短時間で?」と思うかもしれませんが、内容は超濃密。実際、4時間の間に途中トイレ休憩が1回あったくらいで、ずっとぶっ続けの授業でした。
内容は以下の通り。
- CPR人形を使った心肺蘇生法
- AEDの使い方
- 救急患者へのアプローチ法
- 窒息時対応
- ケガの固定
- 居合わせた人との連携方法
- ロールプレイでの患者対応(赤ちゃん・成人)
などを全員で繰り返しました。
もちろん、全編英語です。
- インストラクターの説明を英語で理解
- 英語で質問をされる
- 生徒同士で英語で会話
文字通り、「英語を使わないと」成立しませんし、「相手にわかるような英語を話さないと」理解してもらえません。
私自身も、これはなかなかやりがいがあるなと思いながら受講しました。
修了後にCanadian Red Cross公式修了証
そして全パートを無事終えると、Red Crossの公式修了証がもらえます。
これはカナダ全土、そして多くの国際的な現場で認められる資格。「私はFirst Aidの正式トレーニングを英語で受け、資格を取得しました」と堂々と言えます。
短期でも大丈夫な理由
Blended Courseを最大限に生かす
ここで多くの人が気になるのが、
「そんなの長期留学じゃないと無理じゃない?」
という点。でもここまでご説明したように、このFirst Aiderコースは Blended Courseなので、滞在自体は超短期でも受講できます。
まずRed Crossのオンラインコンテンツ学習部分は、日本にいる間に全部終わらせておきましょう。忙しいお仕事の合間を縫って少しずつご自分のペースで進めることができます。このコンテンツを学習している間は英語の学習時間です。単語や言い回しをどんどん吸収&暗記しながら、同じチャプターを繰り返し学習するのもいいですね。
繰り返し学習できるデジタル教科書
実際にこのデジタルコンテンツに出てきた単語や表現は、現地での実践授業でかなり頻繁に使いました。インストラクターに質問された時に、教科書で覚えた表現をそのまま使ったこともたくさんありました。例えば、インストラクターがダミー人形を使ったCPRをデモンストレーションしながら「これではちゃんとできてませんね。何がいけませんか?」と質問しました。答えは「押しが浅い・もっと深く押さないといけない」だったのですが、教科書で出てきた単語「recoil」を思い出し、
“The chest should recoil after each compression.”
と答えたのを覚えています。
ちなみに私自身は医療従事者ではないので、きちんと理解するためにもデジタルコンテンツをかなり早めに始めました。
そして実技授業の前日に再度コンテンツを最初から走り読をして、ざっと復習をしてから実技に臨みました。すると、内容も単語も表現も記憶に新しいままだったので、インストラクターからの質問にも答えられたように思えます。
バンクーバー旅行の合間に・留学中の1日を使って
春休みや夏休み、ゴールデンウィークや大型連休を使って、バンクーバーに旅行に来る感じで大丈夫です。バンクーバー滞在中の1日だけ使って実技を受講しましょう。うまくスケジュールを調整すれば、お仕事を休む必要もありません。
ただ、せっかくバンクーバーに来るのであれば、その他の日は観光を楽しみたいですよね。
全体的に3〜4日取れれば、First Aiderコース受講に観光をつけることもできます。観光に向いている季節は4月〜9月でしょうか。12月のクリスマスシーズンはある程度寒いですが、イルミネーションの街を眺めるのは素敵です。
また、今現在バンクーバーに留学中の方でも受講可能です。
平日は語学学校の予定が詰まっていても、週末に実技を受けることができます(実際私も実技は土曜日に受けました)。
航空券もホテルもご自分で取って3〜4日から1週間ほどのバンクーバー旅行をアレンジすることもできます。旅行会社にアレンジしてもらいたい場合はコチラまでお問い合わせください。
オンラインコンテンツでの英語学習
さて、ここからは、具体的に「オンライン座学パートをどう使って英語を伸ばすか」についてお話ししますね。このRed Crossのオンライン学習は、英語学習者にとっては宝の山なんです。
読む力
まず、座学パートはもちろんすべて英語。Red Crossの公式eLearningプラットフォームで、プロフェッショナル向けの教材を読み進めます。ここに、医療英語特有の単語がぎっしり。
- responsiveness
- airway obstruction
- direct pressure
- shock management
日本語の知識がある医療従事者の方だからこそ、「あ、これはこういう意味か」と結びつけやすい。
単語帳で無理やり覚えるより、ずっと自然に身につきますね。
聞く力
テキストだけじゃなく、なんと解説動画も豊富なんです。
- 「Check for breathing for no more than 10 seconds.」
- 「If there is severe bleeding, apply direct pressure immediately.」
こういうフレーズを繰り返し聞いていれば、耳が英語の指示に慣れます。
自宅で自分のペースで
そしてオンラインだからこそ、これを日本でもカナダでも、自宅で好きなタイミングでできること。
- 仕事が終わった夜に30分だけ進める
- 休日にまとめて2時間集中する
これでカナダ滞在を「実技だけ」に絞れるので、忙しい皆様にもぴったり。
具体的な学習のコツ
ここからは、実際に受講すると決めた時にぜひ読んでみてくださいね。
オンライン座学を「ただ流し見する」だけで終わらせず、現地での実技授業で活かすために、こんな方法をおすすめします。
✅ 音読する
教材のフレーズを声に出すだけで、口が英語に慣れます。
✅ 医療英語ノートを作る
新しく覚えた単語やフレーズを、自分の言葉でまとめておく。
✅ シャドーイングする
動画の解説を一時停止し、同じスピードで真似して言う。
これをやると、対面実技のときに
- 聞き取りが楽になる
- 答えを返すのがスムーズになる
- 無駄に緊張しなくて済む
めちゃくちゃ役立ちますよ。
対面実技での生きた英語体験
さあ、オンラインで知識をインプットしたら、いよいよカナダでの対面実技授業。ここがこのコース最大のハイライトです。
講師の英語
座学で出てきたフレーズが、リアルなスピードで、実際の指導で飛んできます。
- 「Ok, now check for breathing.」
- 「No, remember what you need to say first.」
講師は実際に医療現場を想定して指示を出すので、説明が超具体的。
「外国人向け英会話」じゃない、本物の英語が飛び交います。
ちなみに私が受けた時の先生は、実際に市のライフセーバーとして仕事をしたり、ライフセーバー用の研修コースを作ったりしている方だったので、実際にCPRをした時の様々な様子を伺うこともできリアルでした!
返答を要求される環境
講師は説明して終わりではありません。「What do you do next?」など、ものすごい数の質問を投げかけてきます。
一緒に受講する人たちは基本的に現地の人なので、お願いしない限り質問を繰り返すことはありません。
最初はドキドキして「え、何て言えばいいの?」と詰まることもあるでしょう。
でもそれが練習。そこで頭がフル回転するからこそ、使える英語になるんですね。
ペアでロールプレイ
実技授業はとにかく動きます。救助者役、患者役を交代しながら練習。
- 「Can you hear me?」
- 「Don’t move. I’ll help you.」
- 「Call 911 now!」
こういうフレーズを、恥ずかしがらずに何度も口にします。覚える、じゃなく、体に染み込ませる感覚です。
また、ペアの相手とも英語でコミュニケーションをする必要があるので、【脇役】になる時間はありません。その場で理解して動く力を養っていきます。
修了証の価値
実技を終え、最後のテストを無事にクリアすると、Red Crossの公式修了証がもらえます。
Red CrossのFirst Aid修了証は、カナダの多くの職場やボランティア先で要求される正式な資格です。
- 介護施設
- デイケアセンター
- スポーツイベント
- キャンプ指導
そして何より、履歴書に書けます。
これがあれば、「英語で医療的指導を受けた」「国際標準の安全知識を持っている」という証明になります。
また「英語の勉強をしました」ではなくて、
- 英語で専門スキルを学び
- 英語で試験をクリアし
- 英語で資格を取った
この経験は自信にもなりますし、強いアピールになります。
普通の語学学校では学べない「医療現場を想定した英語コミュニケーション」。
それを超短期でも、本格的に体験できるのがFirst Aiderコースの魅力です。
- 英語で聞く力
- 英語で答える力
- 英語で指示を出す力
これらを本物の指導で鍛えられる経験は、医療職のあなたにとって大きな財産になるはず。カナダに行くなら、観光や学校だけでなく、「英語で学ぶ」「英語で命を守る」体験をぜひ挑戦してみてください。あなたの留学が、ただの「英語の勉強」じゃなく、医療者としての成長につながる体験になりますように!